「サイドを増やしたい」と思うと、つい手を速く回したくなります。私も縦回転が強くなりやすく、今はサイモンセンの動きを参考に、身体と手の動きをつなげる方法を練習しています。
この記事では、カイル・トゥループ、アンソニー・サイモンセン、ジェイソン・ベルモンテの3選手を比較します。注目するのは、手の位置と側面へ移るタイミング、身体と足の動きです。横回転量の順位をつけることは目的にしません。
サイドローテーションとは何か
サイドローテーション(アクシスローテーション)は、回転軸の水平方向の向きを表す量です。進行方向に対してまっすぐ転がるフォワードロールを0°とし、横回転の成分が大きい側へ向かうと90°に近づきます。回転数そのものとは別です。
アクシスチルトは、回転軸が水平面からどれだけ傾いているかという上下方向の角度です。手が横へ動いたように見えたことを、そのまま「チルトが増えた」と読み替えることはできません。
USBCの THE COACH — ISSUE #15 でも、ローテーションとチルトを分けて説明しています。手の位置は観察の手がかりになりますが、実際の角度を知るには、離れた直後のボールの回転軸を確認する必要があります。
また、曲がり幅から角度を逆算することもできません。球速、回転数、ボール、表面、レーンのオイルなども球の動きに関係するためです。45°は今回の私の目標であって、全員の正解ではありません。
サイドローテーションの作り方は一つではない
手の動きだけを切り取ると似ていても、そこへ至る姿勢やタイミングは同じとは限りません。USBCは上記の解説で、構え・姿勢・タイミング・足運び・スイングを整えたうえでリリースを見る流れを示しています。ただし、片手投げを含む一般論を、そのまま両手投げ全員の処方箋にはしません。
- 手の位置:ダウンスイング中、ボールの後方・下側・側面のどこにあるか。
- タイミング:側面へ移ったのは、指が抜ける前か、抜けた後か。
- 身体:前傾・横への傾き・肩の向きがどう変わるか。
- 足運び:最後の数歩とスライドに対して、ボールがいつ下りてくるか。
手の軌道を4つの仮分類で観察する
以下の「後方キープ型・内側から抜く型・外側先行型・プレセット型」は、動きを言葉で比較するための仮分類です。正式な投法分類ではなく、3選手をいずれかへ割り当てる図でもありません。分類同士が重なる場合もあります。
右投げを上から見た模式図で、左が身体側(内側)、右が外側です。白抜きの丸が初めの位置、橙の丸が後の位置、青い矢印が手の移動方向です。ボールの回転方向やローテーション角度を示す矢印ではありません。手の高さ・指の関節・前腕の回旋は省略しています。

後方を保つ区間を設け、指が離れる付近で側面寄りへ移る想定。

身体側から後方を通り、側面寄りへ抜けるように見える場合。

ダウンスイングの早い段階で、手が外側へ移って見える場合。

初期から側面寄りにセットし、大きな位置変更を加えない想定。
比較資料には、PBA公式チャンネルの 2024 U.S. Open Stepladder Finals(フル中継) を使います。同じ大会に3選手が出場しているため、助走やフィニッシュを見比べる入口になります。トゥループ対ベルモンテの試合、その後のトゥループ対サイモンセンの決勝を見比べてください。
ただし中継はカメラの位置・ズーム・リプレイ速度が変わります。この映像だけで手の速度や前傾の深さを数値比較したり、指が抜ける瞬間を常に特定したりすることはできません。動画は公式ページへのリンクとし、映像の切り抜きは転載していません。
トゥループのリリースで注目するポイント
私の第一印象は、「手を回す動きが速い」というものです。ここは印象と測定を分けます。速く見えるのが前腕の動きなのか、指が離れた後のフォロースルーなのかを、まず確認したいところです。
スロー映像で追加確認した範囲:23〜26秒付近の正面寄りの投球では、両肘を曲げて両手をボールへ添えた区間から、前へ倒した上体の下を通して足元へ運ぶ流れが見えます。離れた後、左手はボールから離れ、右腕が上へ振り抜かれます。手首だけの動作を分離して速度比較することはできません。
公式中継で見返した決勝第4フレーム付近では、上体を前へ倒し、スライドとともにボールを足元へ運び、右足を後方へ抜く動きが見えます。手の動きも、この身体全体の流れの中にあります。 トゥループの確認場面(約1時間21分27秒から)。指先は小さく映るため、側面へ移る瞬間の厳密な判定は保留しています。
見る順番は、①ボールが足元へ近づいたときの手の位置、②サポート手が離れる場面、③投球手の指が離れる直前と直後です。身体の向きが変わる間に、手がどちらへ動くかも同時に見ます。
「トゥループは手だけで回転を作る」「3人の中で手の回転が最速」とは言い切れません。指先の見えないカットでは側面への移動時刻は不明です。真似するなら、速さを足すより、自分の手が早い段階で外側へ抜けていないかを確認する材料にします。
サイモンセンのリリースで注目するポイント
私には、深い前傾と上半身・肩の回旋が目立つように見えます。ただし、前傾と横への傾きは別です。斜め後ろからの映像では重なって見えるため、「何度前傾している」「3人で最も深い」という比較はしません。
スロー映像で追加確認した範囲:8〜14秒付近では、両肘を曲げてボールを身体の近くへ運び、低い上体を保ちながらダウンスイングへ移る様子が見えます。両手が近くにある区間から、左手が離れたフィニッシュへつながります。正面寄りの視点と動体のぼけがあるため、指が側面へ移る厳密な軌道は確定できません。
決勝第3フレーム付近では、前方からの助走映像のあと、後方からの離れ際・フィニッシュへカメラが切り替わります。後方の画では上体が低く、右足を後ろへ抜き、離れた後も上体と腕の向きが変わる様子を確認できます。 サイモンセンの確認場面(約1時間20分1秒から)。カメラが切り替わるため、手と肩の動きの先後を連続した同一視点で確定することはできません。
注目したいのは、身体が低くなった位置、肩の向きが変わる場面、ボールと胸の位置関係です。肩が動いたことと、手が側面へ移ったことを別々に追い、最後のステップやスライドと照らし合わせます。
私はこの連動を参考にしていますが、深くかがめばサイドが増えると確認できたわけではありません。「肩を強く回すほどよい」という意味でもありません。サイモンセン本人の力の入れ方や、回旋が回転量に寄与した割合は、中継映像からは不明です。
ベルモンテのリリースで注目するポイント
ベルモンテは、私にはフットワークが特徴的で、前傾は中程度に見えます。「中程度」は筆者の印象であり、サイモンセンと同じ撮影条件で測った結果ではありません。
スロー映像で追加確認した範囲:26〜31秒付近の横寄りの映像では、両肘を曲げたバックスイングから、最後のステップとスライドに合わせてボールを下ろす流れを追えます。足元付近では投球手がボールの後方〜下側に見え、離れた後は左足を支点に右腕が振り抜かれます。サポート手の最後の接触瞬間や、前傾角度の選手間の順位は未確認です。
準決勝第1フレーム付近の後方映像では、助走中にボールを下げ、最後のステップからスライドに入る間に上体も前へ傾きます。離れた後は右足が後方へ抜け、投球腕は上へ振り抜かれます。 ベルモンテの確認場面(約57分2秒から)。このフォロースルーの手の高さを、離れる直前の手の位置とは混同しません。
最後の数歩のテンポ、足の入れ替えからスライドへのつながり、ボールが最下点へ来る時点を一組として見ます。そのうえで手が後方にある場面と、指が離れる場面を見返します。足だけ、手だけを独立して真似しないためです。
助走が特徴的に見えても、跳ねるような足運びを大きくすれば横回転が増えるとは限りません。歩幅・移動方向・投球ラインも変わり得るため、まず自分のリリースの再現性とバランスを優先します。
3選手に共通する動きと異なる動き
共通して比較したいのは、両手で支える区間から投球手で離す区間への移行と、足・身体・ボールのタイミングです。一方、前傾の見え方、肩の向きの変化、最後の数歩のリズムは、同じ形にそろえる必要がありません。次の表は測定結果ではなく、観察の整理です。
| 観察項目 | Kyle Troup | Anthony Simonsen | Jason Belmonte |
|---|---|---|---|
| 切り返し | 両肘を曲げて両手をボール近くに保ち、上体の下へ運ぶ区間を確認。頂点の厳密な時刻は未計測。 | 身体近くで両手を添えた区間から、低い上体のまま下ろす流れを確認。 | 横寄りの映像で、肘を曲げたバックスイングから下ろす流れを確認。 |
| 足元での手の位置 | 正面寄りの画では手がボールに重なる。後方・側面の厳密な境界は未確認。 | 正面寄りの画とぼけにより、指の位置を厳密には判定できない。 | 投球手が後方〜下側に見える場面あり。上面からの位置は未確認。 |
| 直前の移動方向 | 手が離れる前後で見え方が変わる。側面への3次元軌道・速度は未確認。 | 手と身体が同時に動く。側面への軌道と回旋の因果は未確認。 | 下ろす手から振り抜く手への移行を確認。離れ際の側面移動量は未確認。 |
| 前傾と回旋 | 上体を前へ倒し、肩の向きが変わる。手だけで回すとは分類しない。 | 低い上体と肩の向きの変化を確認。「最も深い・強い」は未確認。 | バックスイングから前傾あり。「中程度」という順位は未確認。 |
| 足運びと時機 | スライドと足元へのボールの移動を確認。正確な時間差は未計測。 | 最後のステップから左足で支えるフィニッシュへ移る。時間差は未計測。 | 横寄りの画で最後のステップ・スライドとボールの下降を追える。 |
| サポートハンド | 両手を添える区間から、左手が離れたフィニッシュへ。最終接触は未確認。 | 両手が近くにある区間から左手が離れる。支持圧・最後の接触は不明。 | バックスイングで左手がボール近くにある。離れる厳密な時刻・支持圧は不明。 |
| 筆者の仮説の判定 | 「手を回す動きが速い」は印象を保持。3人の速度比較はできない。 | 「深い前傾・強い回旋」は観察仮説を保持。角度・寄与率は未計測。 | 「足運び重視」は本人の意図として未確認。前傾の順位も未計測。 |
この3人を「手で回す型・身体で回す型・足で回す型」と固定分類するのは避けます。全員に手・身体・足の動きがあり、同じ選手でもショットの条件が変わるからです。今回の映像では、3人のローテーションやチルトの実測値、同条件での手の移動速度は確認できていません。
追加のスロー動画は撮影条件や編集速度がそろっていません。再生時間や画面上の移動距離から、選手同士の手の速度を比べることはしません。また、上の4つの仮分類は位置と時機を整理する道具で、角度や球質の良否を決めるものではありません。
後ろから自然に回るリリースと外側へ回すリリース
「後ろから自然に回る」は、手を後方に保つ区間があり、身体やスイングの進行とともに側面寄りへ移る、という観察上の表現です。手を何もしなくてよい、あるいは完全に受動的であると証明した言葉ではありません。
「外側へ回す」も、いつ側面へ移るのかで意味が変わります。ダウンスイングの早い段階なのか、指が離れる直前なのか、離れた後なのかを分けて見ます。側面に手があること自体を、良い・悪いとは判定しません。
リリースを4段階に分けて見る
下の連続図は、後方で支持する区間から側面寄りへ移る一般例です。特定選手の動きを再現していません。4場面は等間隔の時間ではなく、ボール中心を基準にした上からの投影です。高さや足の位置は描かず、「足元に来た時点」は映像の全身像と合わせて確認します。

ボールの後方で支える一般例。スイング中の位置を記録します。

足元に来たとき、支持位置が早く外側へ変わっていないか比較します。

指がまだ触れている間に、接触位置が側面寄りへ変わる一例です。

ボールと手が分かれた状態。後の手だけで直前の位置を決めません。
過去の 両手投げタイプ2 では、持ち方と手首の形から考えました。本記事はそこから一歩進め、位置だけでなくタイミングと身体全体を比較する補足です。過去記事の「20〜30°」を万人共通の適正値とは扱いません。
外側へ動かせば必ずチルトが増える、身体を回せば必ずローテーションが増える、といった一対一の対応は置きません。手の見た目とボールの回転軸は、別の記録として確認します。
筆者が現在練習している方法
現在の私のサイドローテーションは、自己推定で25〜30°程度です。校正した映像やPAPを使った実測値ではありません。45°前後を一つの目標にしていますが、まだ達成できたとは言えません。
- 縦回転が強くなりやすい。
- 手がボールの上を越えてしまう感覚がある。
- 今はサイモンセンの身体の使い方を参考にしている。
- 手首で無理に切るより、身体と連動して手が自然に側面へ移る方法を検証している。
練習で見たいのは、手を回す速さではなく、後方で支えた状態から指が離れるまでのつながりです。「上を越えた」という感覚も映像で確かめ、手の位置が変わったのか、身体の起き上がりでそう感じたのかを分けて記録します。
自分に合ったリリースを探すための練習と確認方法
最初からプロの前傾や足運びを丸ごと再現せず、今のフォームを基準として小さく比較します。両手投げの基本は 持ち方・フォームの基本ガイド、曲げる動作の入口は カーブの投げ方の解説 にまとめています。本記事では比較・記録の方法に絞ります。
- まず普段の投球を撮る。後方と投球側の横から、助走・足元・離れ際が入るよう同じ高さで固定する。撮影は施設のルールと周囲の安全を優先する。
- 可能なら高フレームレートで撮影し、ダウンスイング、指が離れる直前、離れた直後を見返す。見えない箇所は不明と記録する。
- 普段の球と、後方で支える意識を持った球を少数ずつ比較する。前傾・肩・手首・歩幅を一度に変えない。
- 同じボール・近い球速・同じ狙いで比較し、手の位置、バランス、再現性、投球感覚を記録する。曲がり幅だけで成功と判定しない。
- 角度を数値化するなら、プロショップやコーチとPAPの確認・撮影方向をそろえ、離れた直後の回転軸の水平・上下を別々に見る。目視だけの推定と測定を混ぜない。
手首や指を強くひねる反復は、この練習の目的ではありません。違和感が出る動作は続けず、無理のない範囲でフォームを確認します。角度が大きい球より、狙いとタイミングを再現できる球を優先します。
まとめ
3選手の比較では、トゥループは手の動き、サイモンセンは姿勢と回旋、ベルモンテは足運びが、私にとっての観察の入口です。ただし、これは技術の固定分類でも、横回転量の順位でもありません。
手の位置、側面へ移る時機、前傾、肩の向き、最後の数歩を分けて見ると、自分が何を変えたいのか整理しやすくなります。ローテーションとチルトを混同せず、私も25〜30°という自己推定を出発点に、45°前後を目指す練習を検証していきます。結果が出た段階で、感覚と測定を分けて追記します。
参考資料:USBC「THE COACH — ISSUE #15」/USBC High School Coaching Guide(Rotation)/PBA公式・2024 U.S. Open決勝ラウンド。資料確認:2026年10月24日、追加スロー映像の確認:2026年10月25日。図解・アイキャッチは当ブログのオリジナルです。公式動画はYouTubeの標準プレーヤーで表示し、静止画の切り抜き・動画ファイルの再掲載はしていません。

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